個人M&A(事業買収)は、少なからず大金が動くケースが多いです。
そのため、買った後に後悔しないよう、十分に注意して買収交渉を進める必要があります。
気をつけるべきことを、買収交渉前、買収交渉中、買収交渉後の3部門に分けて、解説していきます。
買収対象を選ぶ際に注意すべきこと(買収交渉前)

①無理しない金額から始めること
いきなりキツイことを言いますが、経営の経験が無い方が初めての買収で大金を払うのは、お金をドブに捨てるようなものです。
また、売主にとっても、経験のない方に事業を任せるのは不安に思い、売ってくれない可能性もあります。
ましてや雇用中の従業員がいればその人の人生を左右することになるので尚更売る目線は厳しくなります。
なぜなら、経験のない方がM&Aをしてもうまく経営できずに数ヶ月〜1年以内に事業を潰してしまうからです。
まずは経験を積む意味も込めて、余裕資金で出せる金額で運営できる事業を選びましょう。
②自分の得意なジャンルを選ぶ
例えばあなたが男性だとして、女性向け化粧品販売の事業を買うとした場合、どれだけ多くの障壁があるでしょうか。
女性の趣向、現在の流行、素材、競合他社の情報など、ほとんどのことをイチから調べなければならず、その事業の中身を理解するのに大変な時間が掛かります。
出来れば自分の良く知っている業界の事業を選ぶか、少なくとも自分がとても興味があってよく知っている分野の事業買収をすべきです。
③相談できる人を見つけておく
多くの人は、事業買収自体が初めてかと思います。ましてや経営の経験が無い人もいるかと思います。特に経営経験が無い方は、なるべく身近な社長や経営経験のある人など、事業買収の相談をできる相手を探しておきましょう。
もし周りにそういった人が居ない場合、スキルマーケットやタイムチケットなどの、「経験豊富な方に有料で話を聞けるサイト」で相談してみるのも良いでしょう。
もちろん私も基本的なことはアドバイス出来ると思いますので、興味があれば問い合わせフォームから連絡ください。
いよいよ買収交渉開始!交渉中に注意すべきこと

④売上と経費、収益性など数字に関することを細かく確認する
まず初めに大事なのは売上高よりも、収益性です。
いくら売上が上がっていても、使っている経費が多く赤字であれば意味がありません。
一番良いのは、PL(損益計算書)を提出してもらうことです。
損益計算書とは、売り上げがいくらで、何にお金が掛かっていて、最終的に利益がどのくらいあるのかを明確に数字で理解できる書類のことを言います。
たとえ収益性が低い事業だったとしても、損益計算書を見ればどうして収益が低いのかがある程度分かります。あなたが事業買収することで収益を上げることが出来ると思えるのであればそれは事業買収の絶好のチャンスです!
その辺はご自身の出来ることを考えて、買収すべきか判断すべきです。
損益計算書が分からない方は以下のサイトがマンガで説明していてわかりやすいので参考にしてみてください。

⑤親しい人でもなるべく直接交渉はしない
あなたは今、どんなシチュエーションで事業買収の話を考えているでしょうか。
もし、親しい方から「事業を買わないか?」と話を持ち掛けられたとしても、なるべく直接交渉は避けましょう。
どんなに気を許せる人でもお金が関わるのであれば、あくまでビジネスライクに話をしなければなりません。親しい人だからこそ聞きづらい話もあります。
事業売買の仲介会社や弁護士に仲介に入ってもらうことで、トラブルを避け円滑に交渉を進めるべきです。
以下のような事業承継をサポートしてくれる会社もありますので、仲介に入ってもらうのも有効な手段です。
⑥実態があるかを確認する
あなたが今、買収をしようと考えている事業はどんな業態でしょうか。
店舗であれば店舗を見に行く、WEBサイトならWEBサイトを確認する、会社であれば会社に訪問して中を見せてもらうようにしましょう。
また、在庫品を含めて引き継ぐのであれば、必ずその商品も見るようにしましょう。
出来れば、秘密保持契約書を結んだ上で、部外者には見せられないような内部資料をすべてチェックするべきです。
そうすることで見えてくる問題や、収益化のアイディアなど事業買収に関する多くのヒントが見つけられるはずです。
⑦相手の情報を調べておく
可能な限り相手の情報は事前に調べておくべきです。
住所や名前、会社名をインターネット検索して、実態があるか悪い評価は無いか、細かくチェックするようにしましょう。
会社の住所を調べたら、何も無いただの空き地だった、、、なんて話もあります。
⑧売主にはとことん聞きまくる
事業買収は少なからず大金を払うケースが多いです。
売主がたとえ親しい人でも遠慮せず根掘り葉掘り聞くようにしましょう。
ただし相手の迷惑にならないように礼儀は守り、なるべく一度にまとめて聞くようにすると交渉がスムーズに進みます。
高圧的な態度は取らず、紳士的な交渉をすることでお互いにとって気持ちの良い取引をするよう心がけましょう。
⑨買い急がない
どんなに魅力的に見える事業や、すぐにでも始めたい事業であっても、買い急いではいけません。
慎重に確認していれば見つかっていたような問題も、見逃してしまう可能性があるからです。
たとえ競争相手である買い手が他にも居たとしても、余裕を持ち納得の行くまで事業の全貌をチェックするべきです。
慎重に検討して悩み続けた結果、買えなかったとしてもそれは縁が無かっただけ。
気持ちを切り替えて次の案件を探しましょう。
⑩お互いに納得の出来る金額交渉をする
いよいよ事業買収をしたいと意思を固めたら金額交渉に入りましょう。
一般的に事業を買収する場合、大まかに見て月間利益の12〜36ヶ月程度が売買価格の相場と言われています。事業の将来性が高かったり、売上や利益規模が大きいほど、相場の価格は高くなります。
売主は高い金額で売りたいことが多いので当初は高く値付けされているケースがほとんどです。
慎重に事業の経営内容を見極め、適正な価格を提示しましょう。
⑪契約後の流れと引き継ぎの内容を決めておく
買収が完了しお金を払ってしまった後では、ささいな要望も聞いてもらいにくくなります。
買収した後はどんな内容のことを、いつまでサポートしてもらえるか、ということを明確に文章に残しておきましょう。出来れば、譲渡契約書に記載しておくべきです。
また、引き継ぎの資料も細かく作成してもらうこともお願いしましょう。
きちんと取り決めをしておかないと、引き継ぎ不十分のまま連絡が取れなくなり自分の力で解決するしかなくなってしまう可能性もあります。
⑫なるべく自分で譲渡契約書を作成する
通常、契約書を作成する場合、作った人が有利になるように編集されるものだからです。
もちろん、相手が譲渡契約書を作成することがダメだというわけではありません。
その場合はすべての項目に目を通し、自分の不利になるような文章は削除してもらう交渉をするようにしましょう。
もし不安であれば、かならず経営経験の豊富な方や弁護士にチェックしてもらいましょう。
譲渡契約書の中身によって、その後の交渉がしやすさが変わります。
お金を払ってでも有識者に確認してもらうべきです。
無事、事業買収完了!買収交渉後にやるべきこと

⑬引き継ぎチェックリストを作成する
事業買収が完了し、事業譲渡が完了して相手のサポートが終わるまでの間、一切気を抜かずに引き継ぎを完了させます。
具体的には引き継ぎチェックリストを作成し、一つ一つ潰していきます。
項目⑪で作った流れと内容に沿って、引き継いだものと資料を確認していきます。
⑭引き継ぎ期間内に事業をスタートさせる
なるべく、相手のサポートを受けられる期間内に事業をスタートさせましょう。
事業を開始すると、今まで思いつかなかった疑問点や問題が出てくる可能性があるからです。
⑮トラブルは迅速に対処する
譲渡契約前には話に出てこなかった問題や想定外の問題が発生した場合はすぐに売主に相談し、解決するまでサポートを受けましょう。問題の大きさによっては買収金額の一部払い戻しや買収の取り消しをしなければならない事態になるかもしれません。
その場合によっては売買の仲介会社や弁護士に相談し、早急に問題を解決しましょう。
まとめ
事業買収はとても大きなお金が動きます。
慎重になりすぎるくらいがちょうどいいと考え、見極めて交渉を進めることが重要です。